監督:村瀬修功
出演:
2009年に34歳という若さで早逝した、
伊藤計劃(いとう けいかく)の2007年のデビュー作をアニメ化した作品。
但し、伊藤計劃が残した長編3作を全て映像化するという、
企画「Project Itoh」の作品としては、
「虐殺器官」はその最後の3番目の作品となっている。
内容というのは、近未来SFで、
9・11後の世界を予見的に描いている。
アメリカなどの先進国は、テロ対策によって高度な監視・管理社会になっていて、
それによって平和を維持しているが、
実はそれだけでは完全にはテロを防ぐことができず、
ジョン・ポールという人物が暗躍し、
テロの温床となりうるような国家に内戦を起こさせ、
先進国の平和を維持しようとしている。
主人公は、アメリカの特殊部隊のメンバーの1人で、
感情を抑制されていたり、
痛みを感じない処理をされていたりして、
テロの首謀者などを逮捕・殺害することを仕事しているが、
やがてそのことに疑問を抱くようになり、
というストーリー。
虐殺器官というのは、人間には目や耳などの器官と同じように、
遺伝子レベルで虐殺を行う器官が存在していて、
ジョン・ポールという人物は、それを言葉によって引き出し、
テロの温床となりうるような国家に内戦を起こさせている。
そして、なぜ人間には虐殺器官があるのかと言えば、
それは虐殺することによって食料調整を行い、平和を維持するためであり、
また、人間というのは、仕事であるとか、大義名分があれば、
虐殺という行為も簡単に行ってしまう、ということが語られている。
要するに、自分たちの平和のために他者を犠牲にする、という事について、
それが人間の生まれ持った本質、生存本能であったとしても、
果たしてそれが良いことなのかどうか、
そこを乗り越えて、みんなが平和になれる方法があるのではないか、
そしてそれが、本当の平和であり、
真に未来に訪れるべき理想の世界なのではないか、
という事を提言しているのが、
この「虐殺器官」という作品であると思う。
但し、個人的には、この作品において、
もはやその解決策は示されているのではないかと思っていて、
単純に、食糧不足に陥らなければ、かなりの平和は作られると思う。
結局、武力による平和というのは偽りの平和であって、
生き残るためには他者の物を奪わなければならない、
という方程式が人間の世界から完全に消えた時に、
真の平和は訪れるのだと思う。
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