2017年10月29日日曜日

何者 2016 日本

監督:三浦大輔
出演:佐藤健 有村架純 二階堂ふみ 菅田将暉 岡田将生 山田孝之

カッコ悪くても良いから、という事ですよね。むしろ、カッコつけているほうがカッコ悪い、作中の言葉で言い表せば、むしろ、カッコつけているほうが、寒い、痛い、という事ですよね。ただ、むしろそこは本人たちの問題ではなく、そうである事を肯定してくれる人が周囲に存在しているのか、または、そうである事を肯定してくれる社会であるのか、という事の方が問題であると思う。それから、やはり人には向き不向き、得手不得手があって、バンドをやっていたが世渡り上手な菅田将暉が演じる神谷光太郎と真面目な有村架純が演じる田名部瑞月は会社員向き、芸術家肌の佐藤健が演じる二宮拓人と岡田将生が演じる宮本隆良はフリーランスのクリエイター向き、意識高い系の二階堂ふみが演じる小早川理香は通訳や弁護士など向き、であるように感じたから、必ずしも企業に就職して会社員になる事だけが社会人になる事でも自立する事でも正しい生き方でもないと思う。どちらかと言えば、この作品は、就活を描いているというよりも、人生の岐路に立つ若者の内面の在り様を描いていると思うが、やはり題材に就活を選んでいるので、そのあたりにも示唆されるものがあったら、もっと良い作品になったかなと思う。

2017年10月28日土曜日

ミュージアム 2016 日本

監督:大友啓史
出演:小栗旬

やや過剰ではあったが、小栗旬の演技は良かったと思う。ただ、猟奇殺人犯がテンプレなキャラだったのと、グロい殺され方もそれがあまりに過ぎるとリアリティを喪失してしまって、あるいは、感覚が麻痺してしまって、コメディになってしまう、という部分がマイナスだったかなと。もちろん、それが自分の身に起こったらと考えれば、やはり強い恐怖は感じるが、手口や見た目のグロさを追求するよりも、やはり心理的な怖さを追求した方が良いと思う。

2017年10月27日金曜日

君が踊る、夏。 2010 日本

舞台は高知県。よさこい祭りと病気の野上香織の妹の話を絡め、溝端淳平が演じる寺本新平の成長、そして、その寺本新平と木南晴夏が演じる野上香織の恋の行方を描いている。強いインパクトのある作品ではないが、とても綺麗に巧く作られており、なかなか良い作品だった。この映画の魅力の1つは、やはり野上香織を演じた木南晴夏だと思う。多くのドラマや映画で主役をやるような十代や二十代の女優さんたちと比べると地味な印象ではあるし、正直、そこまですごい可愛いとか美人とかではないのだが、木南晴夏には「何かいい」という不思議な魅力がある。この映画ではそんな木南晴夏の魅力が全開(バラエティ的な面白さだけは無かったが)で、それだけも個人的には観る価値があった映画だった。

書道ガールズ!! わたしたちの甲子園 2010 日本

書道パフォーマンス甲子園を題材にした青春ムービー。成海璃子が主演の他、桜庭みなみ、森本レオ、宮崎美子、などが出演している。アンジェラ・アキの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の歌が印象に残る作品だった。ストーリー展開としては青春ムービーの王道で、この手の作品が好きな人には最後まで観られる作品だと思う。

怒り 2016 日本

監督:李相日
出演:渡辺謙 妻夫木聡 宮崎あおい 森山未來 松山ケンイチ 綾野剛 広瀬すず

何に対する「怒り」だろうか? 不公平であったり不条理であったりする世の中に対する怒り? 人を信じられなかったことに対する怒り? 信じていた人に裏切られてしまったことに対する怒り? 但し、どれに対する怒りであったとしても、むしろその時に起こる感情は怒りよりも「嘆き」なのではないかと思うし、登場人物たちの最後の「叫び」や「慟哭」も、やはり「怒り」よりも「嘆き」であるように感じた。
そして、ストーリーや演出、構成にも不満を感じた。1つには、「怒り」がテーマであると最初からわかっているので、真犯人は誰か、という事に対し、それほど興味を持てない部分。もちろん、気にはなるし、それがストーリーを最後まで引っ張っているのは確かだが、結局、最後に犯人がわかっても、そのことに重要さを感じられないし、そもそも、ミステリー的な構成になっていないので、そういう意味では騙された気分になる。
それから、妻夫木聡と綾野剛のBLな濡れ場であったり、広瀬すずがレイプされるシーンであったり、そういうもので話題性を作り出そう、インパクトを作り出そう、というのがあからさまで、テーマ性を考えた時に、絶対に映像として、シーンとして描かなければならないシーンではないし、むしろ、テーマ性の邪魔になっていたと思う。更には、感情の爆発、怒り、嘆き、という事の表現が、泣き、叫ぶ、そして、大音量のBGMと、あからさまでストレートすぎるところがあり、逆に冷めてしまうところがあった。

探偵ミタライの事件簿 星籠の海 2016 日本

監督:和泉聖治
出演:玉木宏 広瀬アリス

ずっと説明ゼリフを聞かされている感じ。御手洗のキャラがテンプレ。しかも、脳科学者、という設定が活かされていない。広瀬アリスが演じる小川みゆきが完全にいらないキャラ。海流を考えればどこから死体が流れて来ているのか分かる、それから、死んでいない、あるいは、軽症の被害者が実は加害者なのではないか、というのは天才じゃなくても考えられるレベル。水竜の正体が潜水艇のようなものであるのも簡単に想像できてしまう。登場した瞬間に吉田栄作が演じる槙田邦彦が黒幕(真犯人)だと分かってしまう。村上水軍やら忽那水軍やら星籠という潜水艇やら、結局、事件とはあまり関係無い。最後、要潤が演じる小坂井准一が星籠(潜水艇)をぶつける展開は、ギャグとしか思えない。唯一良かったのは、黒田刑事を演じた小倉久寛で、それだけが救いだった。

溺れるナイフ 2016 日本

監督:山戸結希
出演:小松菜奈 菅田将暉 重岡大毅 上白石萌音

テイストがバッラバラ。出雲を連想させる浮雲という地名。鳥居がある泳いではいけない海。神さん。授業中にちょろっと出てくるイザナギノミコトの話。菅田将暉が演じる長谷川航一朗(コウ)の神話的な造形。お面を付けて踊る神楽。そして、水の中のシーンなど、映像(ビジュアル)は幻想的なテイスト。しかし、物語は、都会から田舎に来た美少女が、ミステリアスで野性的な、つまり、ちょっと特別感のある少年と出会い、というベタな青春ラブストーリー。ある事をきっかけにその恋愛が上手くいかなくなったり、ヒロインに思いを寄せる別の男の子とのエピソードがあったり、という要素もベタな青春ラブストーリー。更には、コウを壊し、重岡大毅が演じた大友勝利も振り回し、熱狂的なファンの1人がストーカーになって2回も夏芽をレイプしようとした挙句に最後は自殺したり、小松菜奈が「渇き」という作品でも演じた悪魔的な美少女のテイストも望月夏芽にはあり、とにかく様々なテイストがごっちゃまぜ。他にも、二次元の世界では流行りのドS男子のテイストがコウにあったり、いわゆる高校デビューした女友達的なあるあるが上白石萌音が演じる松永カナにあったり、コウと夏芽がほぼ終始シリアスなのに対し、大友はほぼ終始コメディ的であったり、メインテーマの曲は幻想的なのに、挿入歌はポップな感じだったり、とにかくテイストがぐっちゃぐちゃ。ラストも、神話的であり、青春ラブストーリー的であり、シリアス的であり、コメディ的であり、というのを、とりえず全部詰め込んで、という感じだった。従って、観終わった時の感じとしては、同時に日本食もイタリア料理もフランス料理もその他の国の料理も食べてしまって、結局は、あまり美味しくなかった、という感じ。17日間という短い撮影期間の中で、「溺れるナイフ」という原作の大枠をベースにしながら、とにかく「~的」なものを「瞬間的な美学」を追求して感性の赴くまま撮り、それを何とか観られる作品として編集して完成させたのかな、という印象だった。つまりは、無理があった作品、という事かなと。