リリイ・シュシュのすべて 2001 日本

監督：岩井俊二
出演：市原隼人　忍成修吾　伊藤歩　蒼井優

確かに、こういう１４歳たちもいるだろう。
何かを一歩間違えてしまえば、あるいは、運が悪ければ、
こういうダークな経験をしてしまう１４歳もいるだろう。
但しそれは、一部の１４歳たちのリアルであって、
全ての１４歳たちのリアルではないと思う。





それから、恋愛であろうと何であろうと、
子供たちの世界を描こうとする時に、
大人が喪失してしまっている、あるいは、
大人は悪や邪魔者として存在する、
という世界観になりがちなのだが、
忍成修吾が演じる星野修介は明らかに見た目から変化しているし、
クラス一番の不良だった生徒が不登校になったり、
伊藤歩が演じる久野陽子が突然坊主頭にしてきたり、
蒼井優が演じる津田詩織が自殺したり、
星野修介が殺されたり、
という事に対して、
あまりにも大人（先生）が無関心すぎる。
合唱コンクールの一部の女子生徒たちの態度や行動に対しても、
全く大人（先生）が対応しないのも不自然。

もちろん、実際にそういう現実はあるかもしれないし、
それが子供たちをダークサイドに落とす大きな原因であるとは思うが、
そこも丁寧にきちんと描かないと、
１４歳の子供たちの心の痛みや社会の闇が浮き彫りにならず、
ただ薄っぺらくそれらを表面的に見せているに過ぎなくなってしまう。

そして、子供たちのダークな世界を、
美しい映像と音楽の中で描いてしまうのは、
それを美化しかねない危険性もある。

そこは、恋愛や友情や葛藤を描くのと、
万引きやイジメやレイプや売春や自殺を描くのとでは、
しっかりと区別しなければならないと思う。